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2018/12/04

岐路に立つ米欧関係と欧州「自律性」の模索(『外交』寄稿論文)

「岐路に立つ米欧関係と欧州『自律性』の模索」と題した小文を『外交』第49号(2018年5-6月号)に掲載いたしました。

外務省紹介サイト:https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/gaikou/vol49.html


今回は(といってもしばらく前ですが・・・)、トランプ政権下でさまざまに揺さぶられている米欧関係を、変化とともに従来からの連続性のなかで考えてみました。国防予算の水準を中心としたバードン・シェアリングをめぐる米欧間の議論は厳しさを増していますが、批判を受ける側の欧州では、負担を増やさざるを得ないのであれば、「戦略的自立性(strategic autonomy)」を高めるべきだという議論になります。このあたりが、日米同盟における日本とは異なる部分です。

その場合に、実は米国の側も、「どこまで欧州の自立を認められるか」が問われることになります。バードン・シェアリングは、パワー・シェアリングを伴うべきものであり、バードン(負担)は共有してもパワーは米国が独り占め、というのでは成立しません。もちろん欧州の側には、本当にどこまで安全保障・防衛面での負担を増大させる用意があるかが問われるわけです。ただ少なくとも、国防予算を増やし、装備品の調達を増やすのであれば、米国からの輸入ではなく、欧州内で調達すべきだと考えるのは欧州として自然なことです。この点も、米国からの防衛装備品輸入をトランプ政権懐柔策の重要な柱として使う日本とは状況が違います。

もっとも、これらはいずれも、どちらが正しいという性質の問題ではありません。欧州には欧州の事情と論理があり、日本には日本の事情と論理があるわけです。それでも、互いを考え方を理解しなければ、無用なすれ違いが生まれてしまいますし、それぞれにとっての外交・安保上の選択肢を狭めてしまう結果にもなってしまうのだと思います。