2020/09/28

Abe Shinzo's Legacy in Japan-Europe Relations (The Diplomat)

Michito Tsuruoka, "Abe Shinzo's Legacy in Japan-Europe Relations: Mainstreaming Europe in Japan's Foreign Policy," The Diplomat, 14 September 2020.

URL: https://thediplomat.com/2020/09/shinzo-abes-legacy-in-japan-europe-relations/


Strengthening relations with Europe was one of the most tangible achievements of Abe's foreign policy. It was, in essence, an attempt to "mainstream" Europe in Tokyo's foreign policy.

安倍外交におけるレガシーの1つは、日欧関係の強化でした。これを、日本外交における欧州の「主流化(mainstreaming)」として論じた英語の小文です。これを大幅に拡張した日本語の論考は、近々、日本国際問題研究所のサイトに掲載予定です。

2020/09/24

イギリスの「アジア回帰」(マレーシア『星洲日報』寄稿)

鹤冈路人「英国“回归亚洲”——会带来什么、有何值得期待?」『星洲日报』(2020年9月17日)

URL: https://www.sinchew.com.my/content/content_2344336.html



マレーシアの中国語紙『星洲日報』に、英国の「アジア回帰」について寄稿。日本語オリジナル原稿は下記。

*****

(日本語オリジナル:未公刊につき無断引用禁止)

英国の「アジア回帰」――何をもたらすか、何を期待するか

鶴岡 路人(慶應義塾大学准教授)

今年1月末にEUを離脱した英国は、「グローバル・ブリテン」との標語の下に、欧州以外との関係の強化をはかっている。そこで重視されているのが、地域としての重要性が増すアジアへの関与強化であり、それは英国の「アジア回帰」といってもよい。以下では、英国側の事情を踏まえ、その受け手であるアジアにとっての論点を考えたい。

EU離脱後の関係強化の主たる対象として当初想定されていたのは米国だったが、自由貿易協定(FTA)交渉を含め、「米国第一」のトランプ政権との関係強化は進んでいない。その結果、アジアとの関係の優先順位が上昇した。日本とのFTA交渉は近く合意される見通しである他、豪州、ニュージーランド等との交渉が始まっている。その先に目指されているのはCPTPP11カ国による環太平洋パートナーシップ)への参加である。

外交・安全保障面の関与も拡大の方向である。英国政府は目下、外交・安全保障・防衛政策の統合レビューを行っており、そこでキーワードの一つは、「インド太平洋傾斜(tilt to the Indo-Pacific)」である。近く就役する英海軍の新型空母「クイーン・エリザベス」は、初の遠洋ミッションでアジアへの展開が予定されている。さらに、2隻就役する空母のうち1隻をアジアに常駐させる案も報じられている。

ただし、EU離脱や新型コロナウイルスの感染拡大にともなう経済的損失を受け、今後、インド太平洋への政治的・軍事的関与にどこまでリソースを割くべきかについては、英国内でも厳しい議論が行われるだろう。その意味で、アジア回帰の行く末はまだ分からない。

他方で、英国の回帰を受け入れる側のアジアで、それをいかに捉えるか、何を懸念し、何を期待するかについての議論は深まっていない。これの状態は望ましくない。アジアの側からもしっかりと意思表明をする必要がある。主要な論点は以下の3点である。

1に問うべきは、米中関係に照らしての英国の立ち位置であろう。南シナ海などでの中国の動きがより強硬になるなかで、東南アジア諸国にとっても、域外の主要国の関与を引き出すことは、中国に対する戦略的メッセージになる。他方で、米国の圧力も避けたい。米中対立に巻き込まれたくないと考えるのは自然である。

では英国は、米国と同じ立場なのか。米国に代わって「どちらを選ぶのか」を強制するだけなのか。米国と異なるとすれば、どのような点においてそうなのか。現実の米英間には、共通点と相違点がともに存在しており、アジアの側はそれを見極めることが求められる。

2に、英国のアジア回帰において、価値を共有し、ともに米国の主要同盟国である日本や、歴史や文化、言語を含めて伝統的なつながりのある豪州が柱となるのは自明である。ただし、アジア太平洋であってもインド太平洋であっても、地理的に重要な場所に位置するのは東南アジアである。日本と豪州のちょうど中間である。これが意味することは、東南アジアと連携しない限り、英国のアジア回帰は完結しないという現実である。東南アジアの側から、英国に対して、この点をリマインドし続ける必要がある。

3に、上記の2点を踏まえ、英国のアジア回帰を、アジア側として、いかに主体的に使うことができるかが重要である。政治・安全保障面では、中国の強硬姿勢に抵抗する際、米国(や日本)以外にも関心を有する主要国が存在することの意味は小さくない。経済面では、コロナウイルス危機を受けて、グローバルサプライチェーンの多角化、より端的には脱中国依存が世界的な重要課題になっている。アジア諸国とのFTACPTPP加盟に関しても、多角化は英国の主要な目標の1つである。これは中国以外のアジア諸国にとって大きなチャンスになり得る。

こうした具体的な経済利益から、米中対立を踏まえた戦略的視点まで、英国の方針に反応するのではなく、アジアの側から発信していくことが、今後はこれまで以上に求められている。英国のアジア回帰は、英国のものであると同時に、アジアのものである。

202096日脱稿)

2020/09/19

メディア引用まとめ(日英FTA、香港問題等)

 ここ数カ月の新聞等メディアの記事での引用をまとめて掲載。

(『毎日新聞』2020年7月1日(朝刊)、7面)

2020/09/18

EU-Japan cooperation on defence capabilities: possibilities?

Michito Tsuruoka and Daniel Fiott, "EU-Japan Cooperation on Defence Capabilities: Possibilities?" ARI 76/2020, Elcano Royal Institute, 22 May 2020.

URL: http://www.realinstitutoelcano.org/wps/portal/rielcano_en/contenido?WCM_GLOBAL_CONTEXT=/elcano/elcano_in/zonas_in/ari76-2020-tsuruoka-fiott-eu-japan-cooperation-on-defence-capabilities-possibilities



Co-authored with Daniel Fiott of EUISS on EU-Japan defence technology and equipment cooperation. Although there are a number of obstacles and it is hardly an easy area for the bilateral relationship, there are still possibilities worth exploring.

This is one of the outcomes of a project led by Luis Simon at VUB in Brussels and we held two workshops, first in Tokyo in January 2020 and second in Brussels in March the same year. Many thanks for those who made the project possible.

In the same series of papers, you can also find a paper on EU-Japan cooperation in the Indian Ocean by Luis Simon and Tomohiko Satake here.


スペインのエルカノ王立研究所から、日EU防衛装備品協力に関するペーパーを、EUISSのダニエル・フィオットさんと一緒に刊行。ブリュッセル自由大学(VUB)のルイス・シモンさんが中心になって進めてきた日EU協力に関するプロジェクトの成果物です。2020年1月に東京で、同3月にブリュッセルでワークショップを実施。お世話になった関係者に皆様、感謝いたします。

2020/09/16

A Very British Dodge on Huawei (The Diplomat)

Michito Tsuruoka, "A Very British Dodge on Huawei: How London Has Tried to Evade US Pressure on China," The Diplomat, 6 August 2020.

URL: https://thediplomat.com/2020/08/a-very-british-dodge-on-huawei/



The term "dodge" might be a bit strong. But what I wanted to highlight is the fact that the British decision o 14 July 2020 to phase out Huewei from its 5G network cannot be seen as the country's strategic decision, marking a new direction of its China strategy...

英ジョンソン政権によるファーウェイ排除の決定の意味について、The Diplomatに寄稿。内容的には、先に本ブログでご案内の笹川平和財団IINAへの寄稿の短縮版です。IINA寄稿はこちら

2020/09/13

イギリスのファーウェイ排除――政府報告書にみる連続性(笹川平和財団IINA寄稿)

鶴岡路人「イギリスのファーウェイ排除――政府報告書にみる連続性」笹川平和財団IINA(2020年7月28日)が公開されました(若干遅ればせながらの紹介・・・)。

記事URL:https://www.spf.org/iina/articles/tsuruoka_14.html


英政府は2020年7月4日に、2027年末までに同国の5Gネットワークからファーウェイ社を完全に排除する方針を発表。しかし、これは英国の対中姿勢の戦略的転換とは必ずしも言えないのではないかという観点から、従来方針との連続性に注目して分析してみました。

2020/08/23

慶應義塾大学SFCオープンキャンパス模擬授業/Keio SFC Open Campus lectures

 8月21日は、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)のオープンキャンパスでした。ただ、この状況下ですので全てオンラインでの開催。それでも、多少なりとも臨場感を出すために(?)、私が担当の模擬授業は、日本語、英語ともにSFCの教室から配信。ほとんどのコンテンツは、下記でみることができます。

https://www.opencampus.sfc.keio.ac.jp/



日本語は、「国際政治を学ぶ」と題して、主に高校生を対象に、①使う地図によって見える世界が異なる、②世界各地の動きはつながっている、③報道に頼らず生の資料を読んでみよう、というお話。

URL: https://www.youtube.com/watch?v=tnesugiDR5E&feature=youtu.be

英語は、「Japan in the World: Global Japan vs. Japan First」と題して、日本の対外的関与・役割を巡る日本国内の議論や立場の違いについて話題提供。

URL: https://www.youtube.com/watch?v=B_lhN2ratYY&feature=youtu.be

I gave a lecture at Keio SFC Open Campus on 21 August 2020, titled "Japan in the World: Global Japan vs. Japan First."

[Synopsis]

How do you make sense of the role of Japan and its foreign and security policy in the world? Some would argue that Japan is becoming more active and its mid-set more global. Others might point out that Japan, as a declining power, is more preoccupied with its immediate security challenges and becoming less engaged globally. There exist both elements and the two schools - "global Japan" and "Japan first" - are competing everyday. This competition will shape the direction of Japan's international engagement. Which camp do you think is winning?

The lecture was based on my pieces in the following.

  1. Michito Tsuruoka, "Japan First Versus Global Japan," The National Interest, 14 January 2018.
  2. Michito Tsuruoka, "Competing Visions of Japan's International Engagement: Japan First vs Global Japan," The International Spectator, Vol. 55, No. 1 (2020).

2020/07/12

「合意なき移行期間終了」は回避できるか――Brexitカウントダウン番外編(2)

鶴岡路人「『合意なき移行期間終了』は回避できるか――Brexitカウントダウン番外編(2)」東京財団政策研究所(2020年6月30日)

全文URL:https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3464


EUと英国は、2020年末までの移行期間を延長しないことで合意(延長しないとの英国の判断をEUが受け入れ)。これを受けて、FTA交渉を含む、EU・英国間の交渉が加速することになりました。実際、久しぶりの対面で交渉など、新たな動きがありますが、先行きはまだまだ油断できません。合意後の批准作業などを考えて、最終的な交渉期限hあ10月末と言われています。そこから逆算しての交渉が始まるのでしょう。

何らかの合意が成立する公算は高くなっていますが、どの範囲まで合意され、どのような「積み残し」が生じるのか。この点が今後の注目点になりそうです。

2020/07/04

China isn't losing Europe yet (The Diplomat)

Michito Tsuruoka, "China isn't losing Europe yet," The Diplomat, 6 June 2020.



My humble contribution on Europe-China relations. Europe is getting more critical of China, but it is still way too early to claim that China is losing Europe. The real battle has barely begun...

欧州・中国関係についてThe Diplomatに寄稿。欧州の対中認識は厳しさを増し、中国は「オウンゴール」続き。その結果、「China is losing Europe」という議論が欧州でも一部で流行っています。

しかし、欧州の対中認識は一枚岩からは程遠いですし、中国も、陰に陽に巻き返しをはかるはずです。そのため、勝負はまだまだこれから。それに、「中国が欧州を失った」と議論したところで、欧州が勝つわけでも、対中脆弱性が解決するわけでもありません。ということで、タイトルのとおり、「China isn't losing Europe yet」なわけです。

2020/06/27

在ドイツ米軍削減計画――軍事的合理性と政治的衝動の衝突(笹川平和財団IINA寄稿)





在独米軍削減問題については、米Wall Street Journal紙によるスクープを受けて、すでにさまざまに議論されているところですが、まずは改めて整理。オブライエン大統領補佐官は、同じくWSJ紙上で、この計画を事後的に正当化するようなop-edを出しましたが、今回の話には軍事的合理性は見出しにくく、政治的衝動との側面が強そうです。

だとすれば、中国の脅威ゆえに日米同盟の重要性は揺るがないという、軍事的合理性に基づく議論が安泰とは限らなくなってしまいます。単純な比較は禁物ですが、トランプ政権が他の同盟国とどのように接しているかは常に見ておく必要があります。

小文は6月24日のトランプ・ドゥダ会談の前に脱稿していたのですが、同首脳会談では、在独米軍削減分をポーランドに移駐させるような新たな合意は無し。これはNATOの結束という観点でよかったと思います。直前のNATO事務総長からドゥダ大統領への電話が効いたのか。ポーランド大統領選挙4日前に、さすがに米側も新たなコミットを避けたのか。あるいは、米側でも在独米軍削減について、まだ全く具体的な案がなかっただけなのか。

なお、オブライエンop-edに対しては、大規模駐留は(in partとはいいつつ)「古い」としながら、在独米軍の一部を他の欧州やアジアに移すというのはおかしいといった指摘や、アジアで必要なのは陸軍ではなく海空軍だ、などと突っ込まれていまして、米国内を含めた批判の大きさに焦って、考えを整理する前に急いで正当化を試みたという感じだったのでしょうか。

オブライエンop-ed(2020年6月21日)はこちら:
内容に欠ける米・ポ共同声明(2020年6月24日)はこちら:

トランプのお得意のドイツ批判はしたものの、今一つ盛り上がりに欠けた米・ポ共同記者会見(2020年6月24日)はこちら:

2020/05/20

米戦略爆撃機のグアム撤退(『自由時報』寄稿)

鶴岡路人「美國戰略轟炸機 撤離關島」『自由時報』(2020年5月18日)。

記事URL:https://talk.ltn.com.tw/article/paper/1373426




台湾の『自由時報』に米戦略爆撃機のグアムからの撤退についての小文を寄稿しました。オリジナルを日本語で書き、中国語に翻訳してもらったものです。ご参考までに日本語版は以下のとおりです(中国語版からは副題が省かれてしまいました)。

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(日本語オリジナル:未公刊につき無断引用禁止)

米戦略爆撃機のグアム撤退で求められるもの
――説明の一貫性と抑止態勢の全体像のなかでの議論が不可欠 

鶴岡 路人(慶應義塾大学准教授)

2020年4月16日、「常時爆撃機展開ミッション(continuous bomber presence mission)」の一環としてグアムのアンダーセン空軍基地に展開していた戦略爆撃機、B-52が米本土に向けて飛び立った。これにより、2006年から継続されていた戦略爆撃機のグアムへの常時展開が終了した。最後の帰還フライトのコールサインは、ユーモアたっぷりに「SEEYA(See ya:またね)」だった。

米国によれば、これは、2018年の米国防戦略(National Defense Strategy)で示された「動的戦力運用(Dynamic Force Employment: DFE)」の実践との位置づけである。DFEでは、戦略的柔軟性と行動の自由が重視されており、変化する戦略環境のなかで、より柔軟に、積極的に、そして規模を調整して必要な場所に戦力を投入することが目指されている。作戦面においては、敵に対する予測不能性を高めることも目的の一つである。

米戦略軍によれば、今後は前方展開ではなく、「我々の選択するタイミングと頻度で」米本土からアジア太平洋地域に爆撃機を派遣することになるという。そして、同地域への米国のコミットメントは揺るがないことが強調されている。 

実際、4月16日にB-52が米本土に帰還した直後の4月21日には、サウスダコタの基地所属のB-1爆撃機が日本近くに飛来し、航空自衛隊のF-2戦闘機も参加した訓練が行われた。グアムからの爆撃機の撤退は唐突だったとの印象があり、一部で懸念が表明されていたが、それに迅速に対処する形になった。 

戦略爆撃機は航続距離が長いため、米本土から北東アジアに飛来し、着陸せずに米本土に帰還することが十分に可能である。そのため、少なくとも軍事的・能力的には、前方展開する必要がないと指摘される。しかし、グアムからの戦略爆撃機の撤退を考える際には、2つの問題に着目する必要がある。 

第1に、今回の決定をいかに説明するかというメッセージの問題である。求められるのは、説明の一貫性である。米国自身、従来は、グアムへの爆撃機の常時展開は地域における抑止態勢や同盟国への安心供与において重要な役割を果たしていると説明していた。意味があるからこそ、コストを負担してそれを実施していたのである。爆撃機は航続距離が長いために前方展開が不要であるのは事実としても、以前からそうなのであり、突如として爆撃機の航続距離が延びたわけではない。こうした部分の説明の一貫性を保つことは、抑止と安心供与の両面において重要である。

オバマ政権下で、核弾頭付きの潜水艦発射型トマホーク巡航ミサイル(TLAM-N)の退役が決定されたが、このミサイルも、以前は、日本などの同盟国への安心供与として重要な役割を果たしているとの説明がなされていた。そのため、この退役に対しては日本の一部などで懸念が表明された。それまで重要だとされてきたものを不要、ないし他の手段で代替可能だというのであれば、丁寧な説明が求められる。

第2に、爆撃機の常時展開終了の決定は、地域の抑止態勢の全体像のなかに位置付ける必要がある。単体でその是非や影響を議論しても意味がない。米軍のDFEはグローバルなコンセプトだが、この地域では、まず日本や韓国に対してトランプ政権が強く求めるバードン・シェアリングの文脈がある。日米同盟の抑止態勢において、ミサイル防衛や警戒監視など、日本の果たす役割は上昇基調にあり、米軍の戦略爆撃機との共同訓練も増加している。加えて、2019年8月のINF(中距離核戦力)全廃条約の破棄を受けて、新たな地上発射型ミサイルのアジア太平洋地域への配備もアジェンダにのぼっている。 

これらは相互に連関しており、常に全体像のなかでの位置づけを踏まえた議論を行い、抑止態勢強化のパッケージを実現することが求められる。そのためには、米国が一貫したメッセージを発するとともに、同盟国・パートナーの側も、米国の決定に反応するだけでなく、米国に対しても能動的に提案していくような姿勢がいままで以上に必要になるだろう。

(2020年5月2日脱稿)
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2020/05/18

『EU離脱』の要約とトーク

拙著『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書、2020年)が、本の要約サイト「flier」で紹介されました。あわせて、voicyの「荒木博行のbook cafe」(2020年5月11日)でも紹介していただきました。

flier:https://www.flierinc.com/summary/2254
voicy:https://voicy.jp/channel/794/79805


最近、本の要約が国際的に流行っていますね。忙しくてなかなか読めない人にとって、それで内容が一通り理解できることは、特に話題になっているビジネス書や教養書に関しては便利ですよね。読まずに「知ったか」できるわけです。そんなことを書くと、ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』(ちくま学芸文庫、2016年)を思い出してしまいます。

ただ、このビジネスの深いところは、要約では飽き足らずに、本を手にとってくれる人が一定数いることなんですね。だからこそ出版社も著者も、こうした要約ビジネスに協力するわけです。筑摩書房自身、「webちくま」というサイトで新刊書の一部を公開しています。他の出版社も類似の企画が少なくありません。拙著の場合も、以前このブログでもお知らせのとおり、「webちくま」で「はじめに」が全文公開されていますし、JBpressにも要約が掲載されています。それらが売り上げにどのように貢献したかは、少なくとも著者には分かりませんが・・・。

ところでvoicyの「荒木博行のbook cafe」のアラキ(荒ちゃん=flierのCOO)は、実は大学の学部時代のゼミの同期です。卒業から20年以上たって、このような形でまた接点があるのは嬉しいことです。ということで、このvoicyは、本の紹介というよりは、昔の話がメインという感じですね。

2020/05/02

イギリスの新型コロナウイルス対策に影を落とす対EU、対中国関係

鶴岡路人「イギリスの新型コロナウイルス対策に影を落とす対EU、対中関係――Brexitカウントダウン番外編」東京財団政策研究所(2020年4月30日)が東京財団政策研究所のサイトで公開されました。

全文URL:https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3398


連載「Brexitカウントダウン」が今年1月に終了してから、久しぶりの東京財団政策研究所サイトへの寄稿になりました。Brexitは実現したものの、「Brexitは終わっていない」というのが実際のところです。

今回の新型コロナウイルス対策においても、人工呼吸器などのEUでの共同調達計画への参加問題がBrexitとの関係で政治的争点になり、また、たとえ感染が下火になっても経済的損害が膨大なものになることが確実ななかで、経済的にはさらなるダメージになるうえに、各種の非常事態計画が必要となる「合意なき移行期間終了」に本当に突き進むつもりなのか。ジョンソン政権の対応が問われています。

2020/04/23

「どうした!?英国」(国際政治チャンネル)

3月20日(金)にニコニコチャンネルの「国際政治チャンネル」の「どうした!?英国」に出演し、細谷雄一先生司会のもと、君塚直隆先生とご一緒いたしました。

君塚先生の『エリザベス女王』(中公新書)と拙著『EU離脱』(ちくま新書)の刊行を受けて、あわせて英国について大いに語り合うという企画でした。「国際政治チャンネル」にお邪魔するのは初めてでして、今一つ勝手が分からない部分もありましたが、楽しかったです。関係者の皆様、そして、ご覧いただいた方々、ありがとうございます。

2部構成でして、前半の1時間ちょっとが無料、後半が有料です。私のBrexitの話は主に後半なのですが、前半部分はYouTubeでも公開されています。

ニコニコURL:https://ch.nicovideo.jp/morley/video/so36613183


YouTube URL:https://www.youtube.com/watch?v=jQ4sY8ynp1I&t=4s


2020/04/22

「新型コロナウイルス 感染拡大で亀裂深まるEU」(NHK・BS1)

NHK・BS1「キャッチ!世界のトップニュース」(2020年4月20日朝8時から)の特集「新型コロナウイルス 感染拡大で亀裂深まるEU」で、EUの対応と課題についてお話しました。自宅からSkypeでの事前収録でした。

時間の関係もあり、あまり深い部分には入れませんでしたが、非常にうまく編集していただきました。そして、ほとんどそのまま文字起こしされたものが、記事としてNHKのサイトに掲載されています。

記事URL:https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/catch/archive/2020/04/0420.html







2020/04/07

新型コロナウイルスに直面するEU

鶴岡路人「新型コロナウイルスに直面するEU――結束を保てるのか」笹川平和財団国際情報ネットワーク分析(IINA)(2020年4月6日)が笹川平和財団のサイトにアップされました。

URL:https://www.spf.org/iina/articles/tsuruoka_12.html



新型コロナウイルスに関して、欧州についても、イタリアやスペインの現状などについては、日本でもさまざまに報じられています。しかし、EUの姿はほとんど見えず、話題になるのはEU内でのマスクの奪い合いといったような状況でして、「EUは何をしているのだ」との思いが私自身、募っていました。

そこで、とりあえずの観察としてIINAに小文を寄せました。その中でも触れた「コロナ債」に関する議論の行方は、引き続き注目です。人命が直接に関わるなかで、EUの結束の真価が問われています。

2020/04/05

The Shape of a Japan-UK Free Trade Agreement

Michito Tsuruoka, "The Shape of a Japan-UK Free Trade Agreement: Limiting damages or designing a bold future?" The Diplomat, 2 April 2020.

Article URL: https://thediplomat.com/2020/04/the-shape-of-a-japan-uk-free-trade-agreement/


Also reprinted as Michito Tsuruoka, "The Shape of a Japan-U.K. free trade agreement: Should the aim be limiting damage or designing a bold future?" The Japan Times, 4 April 2020.

Article URL: https://www.japantimes.co.jp/opinion/2020/04/04/commentary/japan-commentary/shape-japan-u-k-free-trade-agreement-2/#.XoljNcj7RPY



There is a trade-off between (1) making the agreement ready on time, thus limiting damage and (2) designing a bold future by showing a new model of the economic partnership between advanced and mature economies. It all depends on the outcome of the EU-UK negotiations. Trade negotiators in Tokyo do not want to conclude a definitive deal with London before knowing the final shape of the EU-UK economic partnership - thus they remain in the wait-and-see mode.

世の中、新型コロナウイルス対応でそれどころではありませんが、Brexit後の日英関係の焦点の一つである日英FTAについて、日本の観点で論点を整理してみました。

移行期間終了時点で日英間の枠組みが消滅することを避けるために、「とりあえず」の協定を結ぶのか、これを好機として、今後の世界の先進国間の経済連携のモデルとなるような野心的な協定を目指すのか。後者の場合は、交渉に時間がかかるために、その前段階として、「とりあえず」の協定を締結する必要が生じるかもしれませんが、日本側では、いかなるFTA(EPA)でも、国会の承認を得なければならないとの事情があり、これを2度も行うのは避けたいとの考慮もあります。

そのため、まずはEU・英国間のFTA交渉がどうなるのか、2020年末までの移行期間が延長されるか否かなどを見極める必要があるというのが基本的姿勢なのだと思います。EU・英国間交渉もコロナウイルスの影響でほとんど停止していますし、日英間では正式な交渉入りができていません。遠隔でのビデオ会議でも、ある程度の話し合いはできますが、FTA交渉は、いくつものセッションが同時並行する大規模なものであり、例えば1週間、朝から晩まで集中的に行うようなものですので、ビデオ会議だけではなかなか厳しそうです。

日英FTAについては、時機を見て日本語でも何か書ければと思っていますが、とりあえずは、The DiplomatないしThe Japan Timesの英文コメンタリーをご覧いただければと思います。

2020/04/01

『EU離脱』書評掲載(『外交』)

『外交』Vol. 60(2020年3・4月号)に、宮下雄一郎先生(法政大学法学部教授)による拙著『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書)の書評が掲載されました。

4頁にわたる素晴らしい書評で、著者の意図を汲み取っていただいたのみならず、それを超えた新たな意義づけをしてもらったようでもあり、嬉しい限りです。ありがとうございます。






2020/03/31

欧州のインド太平洋戦略(『外交』寄稿)

鶴岡路人「欧州のインド太平洋戦略ーー大国間競争時代のEU」『外交』Vol. 60(2020年3・4月号)が刊行されました。

欧州のインド太平洋戦略とはいっても、「欧州」に単一の戦略があるわけではありませんし、仮にその萌芽のようなものがあったとしても、現在は新型コロナウイルスへの対応でそれどころではありません。拙稿では、パンデミックについては全く触れていませんが、それが終息した後の世界は、従来よりもEUにとってさらに厳しいものになっているのではないでしょうか。その意味でも、まずはその基礎条件としての論点を整理しておくことも有用かと思っています。Brexitの影響にも触れております。『外交』の今号は、下記のように全文が無料公開されていますので、この機会にご笑覧いただければ幸いです。






今回は主特集が中東情勢、小特集がヨーロッパです。小特集では、遠藤乾先生の「再定義される欧州 2020年代のEU像」、正木靖外務省欧州局長のインタビュー「駆動する『連結性』の外交戦略」などが掲載されています。

通常は掲載記事のうち数本のみがウェブで無料公開されるのですが、今回は、新型コロナウイルスのために外出が難しい人への配慮として、出版元の都市出版社のウェブサイトで、全ての記事が公開中です。PDFで無料ダウンロード可能です。この機会に是非どうぞ。



2020/03/24

同盟とDNA(『三田評論』)

鶴岡路人「同盟とDNA」『三田評論』(2020年3月号)が、三田評論ONLINEにアップされました。「同盟って何だろう」という文脈で日頃考えていることを随筆的に書いた短いコラムです。

URL:https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/researchers-eye/202003-3.html




同盟をDNA(血や人種)に還元させすぎるのは危険ですし、現実にも合致しませんが、他方でやはり無視できないのではとの思いをずっと持ってきました。米英関係を見てもそうですし、米豪関係もそうです。昨年11月に豪州を訪れたときに、「豪州にとっての対米同盟はDNAの一部ではないか?」と皆さんに質問し続け、またいろいろと考えることができました。

「日本をアジアの英国に」という議論は、米国でも一時流行りましたが、私は一貫して懐疑的です。日米同盟は、いわば「DNAではない同盟」の挑戦として画期的なのだと考えています。

2020/03/22

『EU離脱』(ちくま新書)の紹介掲載

拙著『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書、2020年)の紹介記事が新聞・雑誌にいくつか掲載されました。掲載順に下記のとおりです。






いずれも短いながらも的確かつ好意的な紹介でありがとうございます。『週刊文春』の紹介では、「リアルタイムで情勢を追っていた著者の書きぶりには一抹の狼狽が滲み出ていて、それがなおさら事の深刻さを物語る」とも。実際にお読みいただいた感じがでていて、嬉しいです。

また、インターネット上での書評・紹介もいくつか見つけました。このように丁寧にお読みいただけるのは書き手として最も幸せなことです。ありがとうございます。



2020/03/15

Why Asia needs to worry about transatlantic tensions (ThinkChina)

Michito Tsuruoka, "Why Asia needs to worry about transatlantic tensions," ThinkChina, 13 March 2020 is now available online. ThinkChina is a e-magazine by Singapore's Lianhe Zaobao, launched in autumn 2019.

Article URL: https://www.thinkchina.sg/why-asia-worry-transatlantic-tensions


This is a revised version of what wrote for Taiwan's Liberty Times (自由時報) in February 2020 in Chinese.

See blog post: http://mtsuruoka.blogspot.com/2020/02/blog-post.html

シンガポールの『聯合早報』が2019年秋にスタートした英語のEマガジン「ThinkChina」に、「Why Asia needs to worry about transatlantic tensions」と題して小文を寄稿しました。

2020/03/12

Competing Visions of Japan’s International Engagement (The International Spectator)

Michito Tsuruoka, "Competing Visions of Japan's International Engagement: Japan First vs Global Japan," The International Spectator, Vol. 55, No.  (2020) is now available.

URL: https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/03932729.2020.1712135

[Abstract]
The state and direction of Japan’s international engagement can best be understood as a competition between the ‘Japan first’ and ‘global Japan’ schools of thought. In light of the ever worsening security environment surrounding Japan, the gap between the Japan first school advocating a focus on the immediate needs of Japan’s territorial defence and the global Japan school arguing for more global engagement is widening. The competition between the two will continue to shape the direction of Japan’s foreign and security posture – and importantly, the global Japan school is far from winning, contrary to what Abe’s hyperactive diplomacy might suggest.


An earlier and shorter version appeared as Michito Tsuruoka, "Japan First Versus Global Japan," The National Interest, 14 January 2018.

The International Spectator誌に、"Competing Visions of Japan's International Engagement: Japan First vs Global Japan"と題した論文を寄稿しました。日本の外交安全保障、特に国際的関与の方向性は、「Japan First」と「Global Japan」という2つの基本的立場のせめぎ合いとして理解できるという趣旨です。このテーマは、引き続き深めていくことができればと考えています。

2020/02/29

ブレグジットの面白さがわかる

「ブレグジットの面白さがわかる」と題して、拙著『EU離脱』(ちくま新書、2020年)の新刊紹介がnippon.comに掲載されました。魅力的な紹介をありがとうございます。

記事URL:https://www.nippon.com/ja/japan-topics/bg900137/

ブレグジット自体が「面白い」かのようないい方には若干語弊がありそうですが、もし本が面白いとしたら、やはり題材が面白かったのでしょうね。イギリス側でにもEU側にもさまざまなドラマがありました。


2020/02/28

Lessons from Ogata Sadako on Internationalism in Japan

Michito Tsuruoka, "Lessons from Ogata Sadako on Internationalism in Japan," nippon.com, 27 February 2020 is now online.

URL: https://www.nippon.com/en/in-depth/d00541/lessons-from-ogata-sadako-on-internationalism-in-japan.html

This is an English version of the original Japanese article I wrote for nippon.com in January 2020, talking about Ogata's internationalism and its failure to take root in Japan, particularly in the country's foreign and security policy discourse.

鶴岡路人「日本外交における国際主義の挑戦」nippon.com(2020年1月28日)
URL: https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00541/


2020/02/27

美歐對立影響亞洲(『自由時報』)

鶴岡路人「美歐對立影響亞洲」『自由時報』(2020年2月24日)が掲載されました。台湾の新聞に寄稿した、米欧関係のアジアへの影響に関する小文です。

記事URL:https://talk.ltn.com.tw/article/paper/1354130

米欧対立はアジアにとっても他人事ではなく、さまざまな好ましくない影響が考えられるため、「他人の不幸を喜ぶ(schadenfreude)」ような姿勢は避けるべきだとの論旨です。



2020/02/25

離脱する英国もEUも弱体化、タガが外れる世界の行方

鶴岡路人「離脱する英国もEUも弱体化、タガが外れる世界の行方」JBpress(2020年2月20日)が掲載されました。

記事URL:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59338

拙著『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書、2020年)からの抜粋記事(JBpress担当者による作成)でして、使われているのは主に第8章、終章で議論した将来展望に関する部分です。先日webちくまで公開の「はじめに」とあわせて、これらをきっかけに本を手にとってくださる方が増えると嬉しいです。


2020/02/21

イギリスのEU離脱は必然だったのか(webちくま)

筑摩書房のサイト「webちくま」で、「イギリスのEU離脱は必然だったのか」と題して、拙著『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書)の「はじめに」が公開されました。

URL:http://www.webchikuma.jp/articles/-/1937


この「はじめに」は今回の本のなかでも、主張のある一番尖った部分かと思います。異論もあるかもしれませんが、証拠に基づく冷静な分析をぶつけ合うことができれば、それはよいことだと思っています。詳しくは、上記リンクをご覧いただければと思います。

2020/02/13

波乱のなかったNATOの70周年首脳会合?

鶴岡路人「波乱のなかったNATOの70周年首脳会合?」笹川平和財団・国際情報ネットワーク分析(IINA)(2019年12月18日)を寄稿しました。

記事URL:https://www.spf.org/iina/articles/tsuruoka_11.html

2019年12月の英国でのNATO首脳会合、トランプ大統領に引っ掻き回されることを多くの人が警戒していましたが、意外と平穏でした。破滅的な状況が回避されればよしとするのだとすれば、我々の側での成否の判断ラインが下がりすぎだと思いますが・・・。


今回誕生した新たなNATO用語(?)は、「2%組(two percenters)」。国防支出の対GDP比のNATO目標である2%を達成した諸国のことです。首脳会合終了後、トランプ大統領の「おごり」で、彼らだけの昼食会が開かれました。トランプ大統領はご満悦だったのですが、同盟としては、何だか微妙な展開です・・・。冒頭のビデオを見ると、トランプに促されて各国首脳が発言しているのですが、あの場面ではトランプを褒めるしかないですよね。何だか不自然なぎこちない会合のようでした。そして何より、ストルテンベルク事務総長、お疲れ様でした。ご苦労、お察しいたします。(と、ここに日本語で書いても伝わりませんが。)

Video by White House (YouTube)

2020/01/31

『EU離脱』(ちくま新書)の見本が届きました!

鶴岡路人『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書、2020年)の見本が届きました。2月5日(7日?10日?)の刊行予定日まで秒読みです。そしてイギリスは、EU加盟国としてとして迎える最後の日に・・・。

(カプラ風に積んでみました。)

(ちくま新書のTwitterアカウントから借用)

(ちくま新書のTwitterアカウントから借用)

(ちくま新書のTwitterアカウントから借用)

2020/01/30

Brexitとは何だったのか、何をもたらすのか(「Brexitカウントダウン」最終回)

東京財団政策研究所ウェブサイトでの連載「Brexitカウントダウン」の第22回(最終回)として、鶴岡路人「Brexitとは何だったのか、何をもたらすのか」(2020年1月29日)が同研究所のサイトに掲載されました。

記事URL:https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3321


2019年3月からの連載が今回で終了となります。お付き合いありがとうございました。かなり頻繁な時期もあったため、このブログで紹介できなかったものも多いのですが、第1回から第22回までの全ての記事は下記からリンクされています。

記事一覧URL:https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3128

また、以前にもご紹介のとおり、この連載をもとに大幅に加筆・修正・再構成を行ったものが、鶴岡路人『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書)として2020年2月5日に刊行予定です。あわせて、よろしくお願いいたします。